紀北町の郷土食「くき漬け」とは?
三重県紀北町の特産品「くき漬け」は、古くから地域の人々に親しまれてきた郷土の味です。
一般的には、サトイモの一種「ヤツガシラ」の茎を塩や赤シソで漬け込んだこの漬物は、特に夏になると各家庭の食卓に欠かせない存在となります。
地元の主婦たちが「さみしいね」と語るように、くき漬けは彼らの心に深く根付いた料理なのです。
新たな法改正とJAの撤退がもたらした影響
しかし、昨今の食品衛生法の改正により、漬物の製造販売には「営業許可」が必須となり、厳しい状況が続いています。
特にJA伊勢がこの事業から撤退してしまったことで、くき漬けの製造に携わる事業者たちは存続の道を模索する必要に迫られています。
食文化の維持には、法改正による新たな基準のクリアが求められるため、事業者たちのプレッシャーは計り知れません。
NPO法人による新しい試み
そんな中、同町のNPO法人「ふるさと企画舎」が立ち上がり、ヤツガシラを生産する農家の支援に取り組んでいます。
この法人は、農家から生茎を買い取り、自らの加工所でくき漬けを製造、JAの撤退後の新たな受け皿となっています。
彼らは地域の食文化を守るため、平成22年から積極的にくき漬け作りに取り組んできました。
加工所もすでにHACCPに対応しており、必要な衛生管理を整えています。
持続可能な事業への道
田上至理事長は「今あるものを互いに利用し合い、協力するのが理想の形」と語り、栽培と製造を「分業化」することで、新しい可能性を見出そうとしています。
しかし、赤字が続く現状や単価の引き上げが課題であり、持続可能な事業運営に向けて多くの試行錯誤が続いています。
伝統的な食文化を守るためには、十分な支援体制が必要だと強く訴えています。
伝統文化の未来を共に考える
紀北町でのくき漬けの存続には、地域住民や行政の理解と支援が不可欠です。
田上理事長は、国に対して伝統的な食文化が消えてしまう危機感を持ってほしいと考えており、助成金支給のハードルを下げるように求めています。
事業者たちが一丸となって情報やアイデアを共有し、協力することが新たな道を開くかもしれません。
今後も紀北町のくき漬けが多くの人々に愛され続けるために、一人一人が意識して行動することが大切です。